SEIRYO Junior High & Senior High School

challenge to change
第一線で活躍するプロと生徒が新たな視点で持続可能な社会づくりの実践について語り合う

青稜中学校・高等学校では日頃から「持続可能な社会」についてさまざまな角度から考え、実践することを繰り返しています。
Challenge to change & professional〜ぼくらの考え方で世界は変わる〜では、 すでに社会に出ている先輩方の目線と生徒の目線、それぞれが考えるSDGsから、新たな視点を発見する試みです。

Vol.1

Hiroyasu Kawate / Florilege

川手 寛康

1978年生まれ、東京都出身。「ルブルギニオン」、「ジャルダン・デ・サンス」、「カンテサンス」にて研鑽を積む。2009年、南青山にて「フロリレージュ」をオープン。2018年ミシュラン二つ星を獲得。サスティナブルな活動にも積極的に参加し、トルコや岩手などの世界料理学会に登壇。2023年9月麻布台ヒルズに移転オープン。2024年Asia's 50 Best Restaurantsで2位を獲得。

生 徒

川手シェフのこれまでのキャリアのなかでSDGsの一環としてフードロスについて積極的に取り組むようになったきっかけを教えてください。

川 手

明確なきっかけというのはないのですが、国内外のさまざまなシェフたちとの交流やライフスタイルの変化が大きいと思います。料理を生業にしている社会人として、飲食業界のサスティナブルやフードロスの問題をどう伝えていくのか、少しずつ社会への責任を意識するようになりました。料理の世界でも、「美味しい」という言葉の意味がサステナビリティを含めた「美味しい」に少しずつ変わってきたように思います。

生 徒

世界料理学会への登壇に加え、サスティナブルな活動に賛同している川手シェフですが、日本におけるフードロスの現状、また日本とアメリカ、ヨーロッパでは意識変化にどれくらい差があるのでしょうか。

川 手

SDGsに関して日本はどちらかというと根底にある感覚がアメリカに近いです。ちなみにオーガニックという言葉にどのようなイメージを持っていますか?

生 徒

化学薬品を使わないとか、健康に配慮した安心感とか……

川 手

そうですよね。日本人は健康志向とか美容とか、どちらかというと自分への影響に対する考え方が多い印象です。対してヨーロッパはオーガニック栽培の目的として、環境負荷を減らして持続可能な環境を作ることが根底にあります。自分にとってどれだけいいかというのはその後なんです。オーガニック大国といわれるデンマークでなぜサステナブルが大きく広がったかというと、自分のためではなくみんなのために広げていった方がいいよねというのが根本で、それが結果に繋がっていると思います。

生 徒

意識したことがなかったけど大きな違いですね。ただSDGsの達成にはフードロスを含め、貧困やジェンダー平等、平和と公正、地球環境など問題が多岐に渡りますが、メディアから発信される情報によって、Z世代は“極端に何かを制限・我慢すること”と捉えたり、守るべきルールに縛られてしまうことも。むしろ言葉だけが一人歩きしているように感じることもあります。

川 手

何かを諦めなきゃいけないのがSDGsだと思っているのかもしれませんね。長く続かない最大の理由は入り口から間違えてるんじゃないかなって気がします。そればかりに縛られず、自分なりのフォーマットを生活のなかで作ってしまった方がいいんじゃないかなと思ってます。無理をしなくても自然にいつの間にかサステナブルと交わっているような。

生 徒

日常のなかでもいろんな情報をみて、なんとなく押し付けられているように思う人もいると聞きます。そもそもSDGsってなんの略だっけ? とか。生活の一部に取り入れるために、わたしたちZ世代はどのような情報の選択、アクションが必要なのでしょうか。

川 手

SDGsは多岐に渡りますから、まずは興味が持てる分野を見つけることが大事ですよね。ただ100%目指さなくてもいいのかなと。極論を言ってしまえばコンビニをやめます、飛行機に乗るのをやめます、家の電気をどうする? とか……。背伸びをしてまで我慢してほしくありません。大事なのは自分とのバランスです。できるだけ交通機関は電車や自転車を使うとか。まずは日常の小さな積み重ねではないでしょうか。

生 徒

青稜中学校・高等学校では生徒が楽しみながらSDGsについて学べる取り組みがあります。たとえば江崎グリコ「17アイス」とのアップサイクルプロイジェクトや、ゴミ分別の大切さを啓蒙するサントリーのプラ100%リサイクル、太陽光発電の利用、地域の清掃活動やフードロス問題に取り組んだり。Z世代が学校教育でこういった取り組みを積極的に学べることについてどう思われますか?

川 手

学生の間は自分にとって何がよいか選択するのが難しいですよね。でも大人になればもっともっと自由度が広がってくるので、SDGsの取り組みを通して自分なりの考え方を作っておけるきっかけになるのでは。そういう意味でも社会に出るための準備期間になるのではないでしょうか。

生 徒

同時にわたしたちZ世代が学んだことを同世代に発信していくのはなかなか難しいと思っています。自分が意識しても何も変わらない、だからやらないという人も多いと思いますが、そういった意識はどうやって変えていけるのでしょうか。

川 手

それは僕も同じです。マインドの変化をもたらしてくれるのは体験だと思うんです。大事なのは文化の異なるコミュニティの人たちと繋がることです。たとえばSDGsの一環で食に対する考えも文化によって違います。人と文化の中に僕たちは生きているので、他者の考えを否定するのではなく、まずは自分たちにできることを見つけ、できることから発信していくという考え方でいいんじゃないかなと思います。

生 徒

これからの時代に伴ったフードロスへの向き合い方、そして明日からでも私たちにもできることとは?

川 手

僕はコツしか教えられないんですけど、とにかく無駄に買わないことです。なんとなく、ひとつだけでもいいから何か買うものを控えるのでいいと思います。マストで残しておきたいものは我慢せず。

生 徒

持続することでそこからまた人の輪が広がっていくかもしれませんね! 小さいことからでも「いいね!」って共感しあえたら素敵だと思いました。最後に川手シェフが考えるSDGsの定義とは?

川 手

SDGsって人のためだと思っています。ハッピーになるために人は生きている。何のために働くのか、何のために料理をつくるのか、そして何のためにSDGSがあるのか、すべては自分以外の人のためにあると思っています。

持続可能な社会のためにフードロスを減らすことは今や世界共通の課題に。
SDGsを学ぶことで消費への意識を改め、 私たち一人ひとりの小さな一歩がよりよい未来に繋がっていくはず。